新しいネット開通、docomo home 5G はどうなのか

2022年3月28日

home 5G は使えるのか

ずっと ADSL という通信環境でがんばってたんだが、ADSL は、2023 年 1 月 31 日を持ってサービスの提供を終了してしまうらしい。
 しゃーなし、光でも引くか、と思っていろいろ調べていたところ、2021 年 8 月から NTT docomo が home 5G というサービスをはじめたことを知った。
 携帯の電波を利用して、家庭用 wifi にしてしまえ、というサービスらしい。

home 5G とはいかなるものか。下の動画が詳しい。ヴァーチャルITコンシェルジュはるかさんの「スマサポチャンネル」の動画で、再生時間 13 分ほどとなっている。

すなわち、シャープ製のホームルータのコンセントをぶっ刺すだけ。
 それだけでおうちの wifi 環境が出来上がる、というものだ。つまり回線工事不要!
 しかも、いろいろ注意事項があるとはいえ、データ量無制限!
 5G 高速通信対応! 5G のエリアじゃなけりゃ 4G でも OK。
 でもって、月々 4,950 円! ホームルータは買い取りだけど、月々の支払いに割引きが適用されるので実質無料。その場合、違約金こそないけど 3 年縛り、という感じになる。途中解約すると、ルータ代 39,600 円の残金を請求される。
 それと初期費用に事務手数料が 3,300 円くらいかかる。

これいいじゃん。
 と思って注文したのだった。他社のプロバイダと契約する、みたいな面倒なこともなくていい。

☎️ home 5G | NTTドコモ

上記のページでも申し込めるし、地域の docomo ショップでも受付けてくれるらしい。
 家電量販店などでも申し込める、という話だ。店によっては、本体の料金がタダ、とかあるみたい。

設置

home 5G は 2022 年 2 月現在、注文が殺到しているらしく対応が遅れている。筆者の場合、1 月 6 日に申込書を返送して、届いたのが約一ヶ月後、2 月 8 日だった。コロナ禍の影響なのか、半導体不足の影響なのか、あるいはもっと別の原因だろうか。

流れを書いておくと、まず web で申込書を請求した。販売代理店によって違うのかもしれないけど、筆者の場合、続いての流れは以下のようだった。

  • その日のうちに確認の電話がかかってくる。
  • 同じ日に、いろいろな説明をする電話がかかってくる。
  • 数日後、申込書が郵送されてくる。四通か五通の書類を書かされ、返信用封筒に入れて送り返す。
  • 二週間後くらいに、最終確認の電話がかかってくる。いい加減しつこい。
  • 機材の発送が決まると、また電話がかかってくる。
  • 一ヶ月後、ホームルータが家に届く。けっきょく入口がネットだっただけで、あとは電話、電話、紙、電話って感じ。2022 だぞ。いい加減にしろ。
本体と同梱物

本体のほかに同梱されているのは、電源コード、LAN ケーブル、マニュアル。

物が届いた後に、いくつかやることがある。
 まず d アカウントにメールアドレスを登録する、というもの。筆者は d アカウントを持っていないので、新たに作成するよう依頼していた。
 ID とパスワードが記載された「d アカウント通知書」という紙が郵便で届いたのだが、そこに記載されている ID では d アカウントにログインできない。
 ここでつまづき、あちこちに電話して 3 時間くらい空費してしまった。

結論として、もし「d アカウント通知書」の ID で蹴られてしまう場合は、「SIM の開通」というのを先にしなくてはならない。

📞 商品到着後の設定・開通(利用開始の手続き) | ご利用ガイド | ドコモオンラインショップ | NTTドコモ

オンラインでも開通手続きを依頼できるようだが、筆者は上記ページの最下段近くに記載されている電話番号で SIM の開通作業をしてもらった。そのように指示されたので。
 さて、ここまできたら、SIM カードをぶっこんで、

SIM カードの差しこみ

コンセントをぶっ刺して設置するだけ。
 電波強度的に、窓際に置くのが吉だろう。

設置の様子

使用感

筆者は群馬の奥地在住なので、5G エリア外である。なので 4G LTE で使用することになる。
 ちなみに、5G だと下の写真の、左のランプが緑ではなく、青で点灯するらしい。
 このランプは通信中、ぺっかんぺっかん点滅を繰り返す。

home 5G のランプの挙動

真ん中のランプは電波強度を示す。青が最強、黄色が中くらい、赤が最弱。
 右のランプはステイタスを示すもので、青の点灯なら通常に動いている。赤の点滅とかでエラーを示す。

wifi パスワードはホームルータの底面のシールに記載されている。また「初回wifi接続用QRコード」というのもあるので、これを iPhone 等で読み取れば、パスワードを入力しなくても wifi に接続してくれる。

実際に使ってみた。
 なにせ ADSL 回線からの通信環境バージョンアップである。
 めっちゃ速く感じる。
 ADSL だったころのスピードテストはこんな感じ。使用したのは Google で「スピードテスト」と検索すると出てくるやつだ。

ADSL のスピードテスト

home 5G だとこんな感じ。

home 5G のスピードテスト

ADSL のころはダウンロードがだいたい、1 Mb/s だったけど、home 5G にしたら 8 Mb/s くらい出る。8 倍の速度アップだ。
 この数字は控え目かもしれない。ところによっては 4G でも 100 Mbps を越えることがある。同じ 4G でも速いエリアと遅いエリアがあるのだ。速度別エリアのマップは以下で見られる。
 筆者は、黄色く塗られた 938Mbps~250Mbps のサービスエリアに住んでいて、上のような数字となっている。

🗺 通信・エリア | NTTドコモ

注目したいのはレイテンシである。レイテンシという数値は、データ要求から受信までの通信の遅延、みたいな理解をしているが、なぜか速くなった。光回線が近所の基地局まで届いてはいるものの、そっからは電波で各家庭につながるわけで、若干の遅延があるはず、と思っていた。
 不審に思ってping www.google.co.jpなどとターミナルで実行してみると、やっぱり 60 ms くらいかかっている。iPhone の Speedtest というアプリを使ってみると、ping の数値がだいたい 30 ms くらいだった。
 ホームルータは、オンラインゲームなんかには向かない、といわれている。レイテンシが足を引っ張るからだ。
 home 5G のレイテンシはあまりよくない。上記のスクショの数字が間違っているんだろう。
 60 ms だとしても、1000 で除算すれば 0.06 秒ということだ。さほど問題なさそうに思える。
 しかし ssh というコマンドで、MacBook Air からネットを介して Mac mini を操作したりするんだけど、その時の反応は確実に以前より鈍くなった(関係なかったらすみません)。

アップロードも目覚しくはないものの、速度が上がっている。
 物凄く速くなった、というわけではない。Youtuber の方など、動画をアップする必要がある場合は物足らないかもしれない。zoom とかも厳しいような気がする。
 たとえば筆者の職場の光回線だと、アップロードは 86Mbps とか出る。

職場の光回線のスピードテスト

これと比べたらアップロードの能力は非力といえるだろう。
 なお、光回線の割にダウンロードが遅いが、これは職場が古いルータを未だ使っているからか、誰かが動画でも見ていたせいではないかと思っている。

wi-fi6 はどうだろう。
 2020 年末に出た M1 MacBook Air は、IEEE802.11ax、すなわち wi-fi6 に対応している。んで、この home 5G も wi-fi6 で接続できるはずなんだが、正直あまり恩恵を感じない。
「システム情報.app」の wifi の項目を見ると、wi-fi6 で繋っているようではある。

wi-fi6 の接続状況

たぶん、もっと高いレベルの通信速度で意味が出てくるのだろう。

速度制限

home 5G はデータ量無制限だが「調子こいてダウンロードばっかしてっと、速度制限かけるよ」的な留意事項がある。
 筆者は毎日、だいたい 16〜25 Gb くらい使っているようだ。でっかい画面で Netflix を見たり、あと FANZA の VR 動画ストリーミングでこれくらいいってしまう。

データ使用量

データ使用量は my docomo にゆき、d アカウントでログインすれば確認できる。

🙂 My docomo | NTTドコモ

上掲したヴァーチャルITコンシェルジュはるかさんは、一日に 100 Gb のダウンロードテストを敢行したが、おとがめはなかったそうだ。これは貴重なレポートといえるかと思う。同氏はさらに「この先、home 5G ユーザが増えて、帯域が圧迫されればどうなるかわからない」という予想を添えている。
 いっぽうで、Twitter などで報告されるところでは、速度制限らしきものを喰らった、という声もある。

筆者も理由の判然としない低速によくおちいる。下手すると下り 1.4Mbps とかになり、深夜 0 時を過ぎると速度が回復する。これは速度制限なのだろうか。速度制限だとしたら、原因が意味不明すぎて使い方の指針にならない。

その他

この home 5G は申しこんだ住所での使用しか許されていない。なんでそうなのかわからないが、持ち運んで使う用には作ってないよ、ということなんだろう。ちゃんと位置情報を取得していて、住所を変えるとバレるようになっているらしい。
 ただ使用住所の変更が my docomo で出来るようだ。
 使用住所の変更は一ヶ月につき 1 回、受け付けている。引っ越し、という事態になっても十分対応できるだろう。

ボタン、ポート類は以下のようになっている。
 LAN ケーブルで、別の wifi ルータに接続したりもできるらしい。

home 5G の背面

WPS ボタンは Windows 搭載の PC を wifi に接続する時に使う。Mac や Linux はパスワードを入力すれば接続できる。前述したように iPhone などは底面の QR コードを読みこむだけで接続となる。

Safari などのブラウザで各種設定にアクセスできる。
 ブラウザで「http://web.setting/」、あるいは「192.168.128.1」へアクセスすれば設定画面が表示される。この時、注意が必要なのは、
HR01a-○○
HR01b-○○
 という、ふたつの SSID があるのだが「HR01a」のほうでないと、アクセスを拒否される。うまくアクセスできない時は、とにかくもう片方の SSID のほうを試すのがいいと思う。
 ログインは右肩のログインボタンから。初回パスワードは、ホームルータ本体の底面に記載されている、何桁かの数字である。各種設定については、下の、home 5G 取扱説明書、が詳しい。

📒 home 5G 取扱説明書

ひたすら遅い

一ヶ月ほど使ってみた。
 あくまで筆者の環境における結論だが、2022 年 3 月現在、home 5G の回線速度は遅すぎて使い物にならない。
 web 閲覧もままならないほど遅い。画像の表示までだいぶ待たされる。ファイルのダウンロードも 30 Kb/s みたいな遅さである。
 スピードテストをしてみると、下り 1 〜 3 Mbps みたいな信じがたい数字が平気で出てくる。
 ただ、Youtube と Netflix だけは遅延なく見られる、ような気がする。
 IPv6 と関係あるのかと思ったけど、IPv6 に対応している Fanza のストリーミングはすっごい止まる。

この低速は時間帯による。だいたい正午ごろから遅くなりはじめる。午後は仕事してるのでよくわからないが、夕方 17 時から深夜 0 時までの間はずっと低速だ。
 深夜 0 時を過ぎると速度が回復するのだが、もう寝てるよ、そんな時間。
 一番ネットに触れる 20 時から 22 時くらいの時間帯、2 Mbps なんだから本当に嫌になる。

同時間帯にネットを使うひとが多くて帯域が圧迫されてるのかな、と思っていた。
 が、そうともいい切れない気がする。

🐰 ドコモ home 5Gの速度測定結果(実測値) | 下り速度・上り速度の平均値を公開中! | みんなのネット回線速度(みんそく)

上記のサイトで、同じひとが時間帯を変えて何度もテストした結果が見られる。ある時間は 100 Mbps 出るのに、別の時間では数 Mbps しか出ていない、という例は意外に多い。
 ただし時間帯は昼は遅くて夜が速い、というパターンも散見される。
 それにしても快調な時と低速な時の落差が大きすぎる。
 1 Mbps ってこたぁねぇだろ、いくらなんでも。
 20 Mbps くらいでいいから安定させてくれよ、と思うが、安定を求めるなら光を引くのが正しかったのだろう。はっきりいって大失敗だった。

5G については、岸田総理が 2021 年末、「デジタル田園都市構想」の一環で人口カバー率 9 割以上を要請している。これ可能だろうか。NTT の目標はたしか、2022 年 3 月までに基地局 2 万、人口カバー率 55 パーセントとかだった。基地局は 1 万を達成したとどこかで読んだけど、その後うまくいっているのだろうか。
 特に田舎である。
 周囲を見回して、こんなところに 5G とかくるかな、と思うようなところだったら、home 5G の導入は用心したほうがいい。貧弱な電波のまま放って置かれる可能性はあると思う。
 というか、4G LTE の周波数帯を 5G っぽく装おって「5G です」っていい張る、いわゆる「なんちゃって 5G」でお茶を濁されることになるのではないか。
 逆にインフラの整った都会なら、home 5G は十分な選択肢になるだろうな、という想像も出来る。

以下に時間帯とスピードテストの下りの結果を掲載しておく。
 単位は Mbps、特に断りがない限り、IPv6 の数字となっている。20 Mbps 以上なら納得でき、それ以下なら納得できないので赤字にした。青字は「わたくしには過分でございます」の意である。
 こちらのSpeed Test (IPv4/IPv6) | iNoniusを利用させていただいた。

3月18日(金)3月19日(土)3月20日(日)3月21日(月)
12:33 2.46
13:03 5.49
17:06 23.1
18:28 4.16
20:57 4.27
23:29 27.9(IPv4)
00:20 47.2(IPv4)
00:57 62.3
11:02 34.1
12:42 3.61
13:13 5.80
17:05 4.33
20:16 4.00
22:08 3.02
00:33 52.7
12:39 5.52
16:05 6.40
19:15 12.3
21:12 4.91
22:04 3.51
23:11 5.54
00:31 61.4
03:31 80.6
11:36 57.4
12:25 6.13
14:16 10.7
16:46 5.29
18:53 5.68
20:32 4.87
23:28 13.5

なお IPv6 に関しては下記の記事のお力を借りました。ありがとうございます。

📡 ドコモの「home 5G」でIPv6を使う方法!2021年12月3日(金曜)まで使える実験用APNで接続 – Jet’s Blog

速度が回復した

さすがにひでぇだろ、ちょいと NTT docomo の釈明でも聞いてやろう、と思ってお客様係に電話してみた。docomo のお姉さんが相談に応じてくれて、以下のようなことを教えてもらった。

  • home 5G の速度が遅い時に試すこと。
    • リブートボタンを押して再起動。
    • コンセントを抜いて SIM カードを入れ直す。
    • コンセントを入れたまま、クリップ等で、底面のリセットボタン(小さい穴)を押す。

リブートなんか何度も試したわっ、などと思いながら SIM カードを入れ直してみた。
 正直、驚いた。docomo のお姉さんは正しかったよ。
 あっさり速度が戻った。
 夜 10 時の混み合う時間でも、Fanza の VR 動画を、HQ 画質で中断なく、こころゆくまで楽しむことが出来た。

3月22日(火)3月23日(水)3月24日(木)
08:26 52.0(IPv4)
12:40 2.10
17:11 36.0
19:01 5.49
23:00ごろ SIM
カードを入れ直す
23:25 74.7
00:25 77.7
01:03 61.2
02:08 86.7
11:43 55.5
12:50 60.3
13:20 44.0
17:07 62.4
18:52 64.1
20:16 63.9
21:15 63.8
22:09 73.9
23:25 72.0
01:27 77.7
11:26 65.3
12:34 49.4
13:14 52.5
17:15 67.0
18:57 61.7
20:26 63.4
21:15 55.7(IPv4)
23:00 54.5(IPv4)
00:23 63.2(IPv4)
01:36 72.8

こんな結果になった。比較的、安定している。予断を許さないが復調したと見るべきだろう。正午ごろ速度が鈍るものの、これくらい出てりゃあ満足である。
 上のほうで「使い物にならない」みたいな暴言をいってしまったことを謝罪して訂正します。すみません、使えました。
 岸田総理につきましても「なにがデジタル田園都市構想だよ、死んだ魚みたいな顔しやがって」的なことを申し上げましたが、つつしんで謝罪します。がんばってください。