【Macで文芸創作】stone ── 端正な日本語エディタ

stone は 2017 の年末にリリースされた、まだ若いエディタだ。AppStore で、3,000 円でダウンロードできる。
 日本デザインセンターというところが制作した、「書く気分を高めるエディタ」である。デザイン主導で作られたのだろうか、趣き深く美しい、禅的な外観が特長といえる。

🔗 stone(ストーン) – 書く気分を高めるテキストエディタ

シンプルで美しい

stone が出来ることはそう多くない。プレーンテキストの編集だ。
 それだけに、ほとんど迷いなく使える。
 画面の下部にポインタを置くと、書式設定があらわれる。

設定できるのは、「明朝体かゴシック体か」「縦書きか横書きか」「文字の大きさ」「行間」「一行の文字数」となっている。自分好みの設定を、設定リストに保存することもできる。

上の「設定リスト」画面で出来るのは、バツ印で設定を削除することと、「新規設定」で設定を作ることだけだ。設定画面を閉じ、エディタの下部の、書式設定で各項目を設定する。設定名クリックすると設定に名前がつけられる。

設定項目は少ないようだが、目的を「日本語で文章を書く」ということに絞った場合、必要十分であるかもしれない。よく練られている印象だ。
 特に行間と文字の大きさを、すぐさま変更できるのはありがたい。行間の変更を捜して環境設定に目をこらしたり、「表示」メニューをあさったり、鈍臭いフォントパネルで文字の大きさを変更しなくてもすむ。

一行の文字数は、エディタのルーラの部分をドラッグすることでも変えられる。

フォントは「明朝体、ゴシック体」の選択だけで、細かく指定できないのは寂しい感じがする。とはいえ、そこを切り捨てたところに、このアプリの意義があるのだろう。無駄を徹底して排している。
 ほかに、「書式設定」メニューで、テキストエンコーディングを選べる。

オートセーブに対応していて、書類は編集されるやいなや、保存される。バージョンを戻すこともできる。
 フルスクリーン対応。Mojave のダークモードにも対応している。
 まだ少し、バギーなところも残っているらしい。動作は軽快といえる。

stone は、いってしまえばこれだけのものである。
 この機能の特化、先鋭化ゆえに、エディタ画面はきわめて静謐である。日本庭園のような、白くさびれたような美しさがある。Mac のフォントとよく似合っている。
 ミニマルで美意識が高い、この感じが好きなひとなら、長くつきあえるアプリになるのではないか。他に、こんなエディタはない、というのは確かと思える。

筆者の感想

以下は筆者の感想である。
 筆者はかねてよりこのエディタに興味を持っており、リリースされるとすぐに購入した。筆者が理想と考える日本語エディタに近いと思ったのだ。
 それなのになぜか、使わなくなった。
 文章を書かないわけではない。けど使わないのである。なぜだろうと良く考えた。おそらく、使うこちらの問題なのだろう。文章を書くときのスタイルが筆者と違うのだ。

stone のエディタ画面を見ると身構えてしまう。綺麗すぎるのだ。なにかしらの世界観みたいなものを押しつけられているように感じる。もしかしたら、ちょっとはマシな文章を書かなくてはいけないのではないか、という気持ちにさせられるのである。
 つまり気分の問題なのだった。
 文章はどんな気分で書きはじめるものか、ひとによって違うだろう。静かな気分で、枯山水的な環境で書くひともいる一方、もっと俗悪な衝動に身を任せたいひともいる。筆者はつまり後者なのである。
「いまから、世界で一番くだらない文章を書く」
 くらいハードルを下げてからじゃないと、怖くて文章が書けないのだ。駄目な文章ならいくらでも書ける。クソな文章なら山のように書ける。たくさん溜まったクソの山から、身を震わせて生えてきた若芽を大切に育てる、みたいなアプローチなのである。

stone はそういうアプローチに向いてない、と思うのは筆者の単なる決めつきだ。それに気づいてからは、だんだんと stone を使うようになってきた。
 ミニマル、シンプルなアプリで、世界一くだらないことを書いても別にいいのである。

フルスクリーン、縦書きがとてもいい

使いはじめてわかったのは、フルスクリーン表示で縦書きがすごくいい、ということだ。筆者にとって stone は、縦書きができる WriteRoom だ。ダークモードにして、部屋の電気を消すと、なんか密室感がすごい。土蔵で小説を書いていたとかいう江戸川乱歩みたいになれる。この状態でいやらしいこと書いてると、たしかにに気分あがってくるから不思議だ。

フルスクリーン表示には圧迫感があって、息苦しくなってくる。そこから逃れたくて文章を書き進める、みたいな効果もあって、執筆が進む気がする。一行の文字数をそこそこにしておくと、筆の進み方にスピード感が出てくる。

stone には確かに、集中力を高める効果があるように思う。日本人が、日本語にこだわって作ったであろう「道具」として見れば、なおのこと身近になっていくと思う。